20230209
雪景色の絵を描きました。
以下はきのう思いついたどうでもいい詩
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ふるさとを持たぬ旅人は、名を持たぬものばかりを拾って歩く。旅人がどんなに丁寧にそれらを拾っても、それらが世界から引き剥がされるときに傷口が少し残る。世界の側にも、名を持たぬそれの側にも。それらの傷口は、その辺を歩いている言葉を一片ずつ吸い込むことで、やがて埋められてゆく。
凍えた旅人を巨樹が匿うとき、巨樹の内なる街は、その旅人の前に一度だけ姿を現す。旅人はその街を、名を持たぬものたちでなみなみと満たす。
一度そこから出た旅人に、巨樹は二度とその街を見せることはない。旅人はただ、翌春にその傍らを通るときに、樹の中に手を差し入れて、内なる街に触れることができるだけだ。
名を持たぬものたちは、名付けられてしまうことを恐れている。旅人だけがそのことを知っている。だから、名を持たぬものたちは、本当は旅人の手に「おかえりなさい」と言いたいのだ。だが言葉はもう残っていない。旅人が樹の上に放り投げていった言葉たちは、もう雪と一緒に溶けてしまった。