草にすわる

 20220326

ぼくの好きな詩にこんなのがあります。

わたしのまちがひだつた
わたしの まちがひだつた
こうして草にすわればそれがわかる
(八木重吉「草にすわる」)

人を思索の深みに誘うのはいつの世でも「自然」と「孤独」だ。どちらか片方ではだめで、両方がいる。孤独だけが思索を深め、自然だけが思索の向きをまっすぐに直してくれるからだ。

けれど、ちかごろは「共感」とか「絆」とかが大事になりすぎて、孤独は排除されるべきものになってしまいました。「孤独をも恐れぬ信念」なんてものは、「そんなものでは生き残っていけませんよ、ほらポジティブにみんなと仲よく、すまいるすまいる!」と処世術指南の先生から笑われるような絶滅危惧種となりました。

一方、「孤独をも恐れぬ信念」があろうとも、クレムリンのかの独裁者には深い思索の境地が訪れることはなさそうです。それはもしかして、座っているのが宮殿の椅子で、草の上ではないからでしょうか。

停戦交渉や国連の会合はぜんぶ草の上でやったらどうでしょう。

というぼくのぼやきを、全然きいてくれない亀3匹と、「なにをお花畑な妄言をぬかしてやがる」という顔できいてる亀1匹 (2022) 紙にアクリル


 

展覧会のおしらせ

 20220308

東京で展覧会(グループ展)です。
富士見町の出版社、草枕社さんから声をかけていただいて、「吉野剛広作品展×草枕社の本たち」という展覧会をやることになりました。
ぼくの作品と、草枕社でこれまでに出版された本の展示をメインに、藤井春日さんの写真作品、太田次郎さんの版画作品も並びます。
下北沢のとても個性的な本屋さんBookshopTravellerの3Fギャラリーにて。
在廊日は未定、追ってお知らせします。


 



おろおろ

 20220308

プーチンが悪者なのは間違いないが、それゆえに「NATOが正義の味方でありゼレンスキーが英雄である」というムード一色に染まるのは恐ろしいことです。
米やNATOの過去の所業だってロシアとかわらないくらいひどいですから。
それにしても、「メディアが伝えない〇〇の真実!」とか「〇〇の本当の正体!」とかいう真偽不明の情報がいっぱい流れてきて、ぼくにはなにが本当でなにがうそか、もうわけがわかりません。
そんなもの全部疑って自分で調べていたら寿命がいくらあっても足りません。じゃあどうしたらよいのでしょう。わからなさを前にして困っておろおろするべきときにはちゃんと困っておろおろすること、くらいしかぼくには思いつきません。
わからなさを抱えておろおろしながら生きるのもエネルギーが要るものです。でも、そうやってまじめに(?)おろおろしていると、何を信じて何を疑うべきか、その基準・ものさしが育って鍛えられていくような気がします。少なくとも、センセーショナルな偽情報に飛びついてだまされてしまうのはおろおろをやめたときでしょう。
なので、今日もまじめにおろおろしています。絵も描いています。